〜T.N氏の書評〜ビタミン剤としての組織論 (前半)

組織戦略の考え方:企業経営の健全性のために」(前半)



■以前、マーケティングで「基本を押さえる」ということを述べさせていただきました。今回は、やる気一杯で、何かというと「うちの会社は・・・」と愚痴る病に冒されている方に、「組織戦略の考え方:企業経営の健全性のために」(沼上幹著/ちくま新書)を読んで、組織論の基本に立ち返って頂きたいと思います。



■著者の他の著作を読んでいる私は、書店でまず本書を手にした時、「新書や日経文庫等にありがちな入門書の類であるのかな」と考えながら、目次に目を通しました。第1章から「組織設計の基本は官僚制」という題目で始まり、「やっぱり、そうか」と思いましたが、新書本購入の可否を悩むほど暇ではないので、とりあえず購入して帰りのバスの中でパラパラと読み進めるうちに、久々に健全に笑える本だということが、すぐにわかりました。



■組織改革に対する「特効薬」にはなりませんが、「ビタミン剤」のように効く可能性が高いと思います。皆さんが本書を読んで「笑い、絶句し、最後は恥ずかしくなる」というような状態であれば、真剣に自分とその周囲を見直したほうが良いでしょう。



■本書は決して、机上の空論にはなっていませんが、著者の読みが深すぎて、個々の話はありがちなのだけれども、組織内でそこまで複雑骨折的に事態が展開するケースも稀ではないかと、抵抗感を持つ方もおられるでしょう。

しかし、「理論を検証する」というよりは「ストーリーで読ませる」本なので、いちいち例外を挙げて批判しても仕方がありません。



■そういう衝動に駆られたあなたは、本書で言うところの立派な「社内野党」になっているのかも知れません。ベストセラーとなった『会社を変える「日本式」最強の法則』(柴田昌治著/ダイヤモンド社)よりは、不思議と親近感があります。

おそらくこちらのほうが、組織の病巣をより的確に把握しているのではないかとも思えます。ただし、解決策の提示という点では、本書は少し弱い気がします。

もっとも、そこから先は個々の実務家が考えるべき問題でもあるのです。

(続く)



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