「基本を押える」

■ハッタリでも威嚇でも何なんでも良いのですが、ものごとの基本を押えてない人が使う専門用語は、わかる人には大変耳障りです。以前、デフレ時代のマーケティングのあり方に疑問を呈しました。相場の反転局面でも同じですが、皆が投げやりな気分になっている状態では、基本がおろそかにされがちです。



プレゼンでの論理展開に関するセンスは良いのだけれども、基本的な知識が曖昧であると、凡人の聞き手には「一時が万事」と、話し手に対して不信感を持つリスクが高まります。聞き手が聡明かつ寛容な方であれば、多少の間違った用語の使い回しをしていても、その明晰な頭脳で「言いたい事」を推論してくれるのでしょうが、そんなに世の中は甘くはありません。ビジネスの場ではなおさら、ディテールにうるさいクライアントに出会ったら最後です。



■前置きが長くなりましたが、マーケティングに関する基本を押えるという意味で、今回は「コトラーマーケティング・コンセプト」(東洋経済新報社)をお勧めします。



著者のフィリップ・コトラーノースウェスタン大学ケロッグ・スクールの看板教授であり、マーケティングに関しては世界的な権威です。「学者の本など読む暇があれば、顧客に会いに行ったほうが良い」と言い切れる、常時実績絶好調の方は無視してください。しかし、「コトラーぐらいは一度は読みたいのだけれども、何百ページもあるテキストを読む暇はない。短時間にエッセンスを吸収したい。」と思われる方は是非、ご一読ください。普段の会議やプレゼンの場で、無邪気に使っていた言葉をフォーカス・スライド(ピント合わせ)してくれるでしょう。



■内容は原著の題名(Marketing Insights from A to Z: 80 Concepts Every Manager Needs to Know)通り、マーケティングに関するいろはをアルファベット順に80項目並べたものです。マーケティングに関連する一般的な項目も多数あり、それらも併せてコトラーのエッセンスに触れることができます。「営業は理屈じゃないのよ」と思う方でも、社会人のマナーとしてせめてこの程度くらいは知っていても損はしません。



■ただ、内容的には極めて「平易な」本であるため、純粋に正論が展開されているという印象もぬぐえず、項目によっては「その程度の説明では子供騙しだ」と感じられる可能性もあります。



■しかし本書ではコトラーが言いたいこと、全体の雰囲気を感じ取ることのほうがより重要です。よって初心者向け辞典のような体裁の本ですが、まとまりが良いため各々の項目で参照されている専門書をすでに多数読んでいる方でも、十分楽しめると思います。



■そこで、これは一つのアイデアですが、読者自身が各項目についての、自分なりのコンセプトをまとめてみられてはどうでしょうか。「コトラーはこう言うが、自分はこうだ」と、彼のコンセプトに比肩できるオリジナリティを導き出してみてはどうでしょうか。そのような独創性溢れる方はきっと、プレゼンテーションの場でも後光が指していることと思います。(TN氏)



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